米国FDAが提供する迅速な医薬品開発及び承認審査のための支援に、Fast Track、Breakthrough Therapy、Accelerated Approval、Priority Reviewがありますのでここでまとめておきます(FDAウェブサイトはこちら)。
なお、日本では先駆的医薬品(先駆け)の指定がBreakthrough Therapy、条件付き承認がAccelerated Approval、優先審査がPriority Reviewに近い制度になります。条件付き承認は、法制化以降2024年10月時点までに事例がなく、次期薬機法改正での対応を含めて、より効果的な施策とできないかが模索されています。
Fast Track
疾患が重篤か(serious conditions)とアンメットメディカルニーズを満たすか(fill an unmet medical need)がFast Trackの対象医薬品となるかの判断材料になります。
疾患の重篤性については、生存率、日々の活動への影響、疾患の進行といった観点が加味されます。FDAのウェブサイトでは、AIDS、アルツハイマー病、心不全、がんの他、てんかん、うつ病、糖尿病が対象となる可能性がある疾患として例示されています。
アンメットメディカルニーズについては、既存治療がない場合の他、既存治療よりよい可能性がある場合も適格とされます。既存治療との比較の考え方として、よりよい有効性、既存治療で生じる副作用がない、転帰の改善につながるような早期診断、臨床的に重要な毒性の低減、緊急の公衆衛生に対応する、という事例が挙げられています。
Fast Trackの指定を受けることのメリットとしては、FDAとの密なコミュニケーションが可能となる点、Rolling review(準備のできた内容から審査を行う)が可能となる点が示されています。
一方で、Fast Trackの指定がAccelerated ApprovalやPriority Reviewの対象となることを約束するものではありません。
Fast Trackの指定は、依頼から60日以内に判断されることとされています。
なお、各年のFast Trackの指定申請数と指定数はFDAのページに掲載されています。例えば、2023年は、272件の申請に対して149件が指定されています。
Breakthrough Therapy
疾患が重篤か(serious conditions)と予備的な(早期の)臨床データから臨床的に重要な評価項目において大幅な改善を示す可能性が示唆されているか、がBreakthrough Therapyの指定対象となるかの判断材料となります。
臨床的に重要な評価項目については、確立されたサロゲートエンドポイントでの有効性や、安全性プロファイルの改善も考慮されます。
Breakthrough Therapyの指定を受けることのメリットとしては、Fast Trackの指定を受けることのメリットに加えて、FDAのシニアマネージャーが対応に関与することが挙げられています。
一方で、Fast Trackと同様、Breakthrough Therapyの指定がAccelerated ApprovalやPriority Reviewの対象となることを約束するものではありません。
Breakthrough Therapyの指定も、Fast Trackの指定同様、依頼から60日以内に判断されることとされています。
また、このBreakthrough Therapyの指定は、Ph2後相談より前に受けることが推奨されています。
Breakthrough TherapyとFast Trackの違いは、FDAのFAQのページに説明があります。いずれの指定も重篤な疾患を対象としますが、Fast Trackの場合は非臨床データのみの段階でも指定の可能性がある一方、Breakthrough Therapyの場合は臨床データから効果が示唆されることが求められる点が異なっています。
Accelerated Approval
サロゲートエンドポイントに基づき、医薬品の審査、承認を行う仕組みです。抗がん剤でよく適用されています。
Accelerated Approval(条件付き承認)では、その承認取得後にconfirmatory trials(検証試験)により臨床的な有用性を検証する必要があります。その結果をもって、医薬品の承認があらためて判断されることになります。
Priority Review
Priority Reviewの指定は、重篤な疾患に対して、既存治療と比較して有効性又は安全性の大幅な改善が見込まれる医薬品が対象となります。
Priority Reviewでは承認審査が優先的に行われることになります。申請から承認までのFDAの目標審査期間が、通常は10か月間のところ、6か月間となります。
承認申請の受理から60日以内にPriority Reviewの対象かどうかの判断がFDAによってなされます。
その他:Orphan Product Designation
米国FDAによる希少疾病用医薬品の指定については、こちらのページに説明があります。Orphan Product Designationを受けることにより、治験における税制優遇、承認申請手数料の免除、承認後7年間の市場独占権の可能性のメリットが得られます。
一方で、日本の希少疾病用医薬品の指定とは異なり、米国では、当局相談での優先的な取扱い、承認審査時の優先審査が約束されるものとはなっていません。
関連リンク
Fast Track:https://www.fda.gov/patients/fast-track-breakthrough-therapy-accelerated-approval-priority-review/fast-track
Breakthrough Therapy:https://www.fda.gov/patients/fast-track-breakthrough-therapy-accelerated-approval-priority-review/breakthrough-therapy
Accelerated Approval:https://www.fda.gov/patients/fast-track-breakthrough-therapy-accelerated-approval-priority-review/accelerated-approval
Priority Review:https://www.fda.gov/patients/fast-track-breakthrough-therapy-accelerated-approval-priority-review/priority-review
Orphan Product Designation:https://www.fda.gov/industry/medical-products-rare-diseases-and-conditions/designating-orphan-product-drugs-and-biological-products
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