GMP調査及び市販後安全対策:2025年薬機法改正に向けた議論

2024年4月18日の令和6年度第1回厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会から、次期薬機法改正の議論が開始されています(関連記事)。

これまでに第2回で業界要望の確認、第3回で承認制度の議論が行われました。

2024年7月5日に、令和6年度第4回会議が開催となりました。この会議では、薬局・医薬品販売制度の議論とともに、安全対策・品質確保に関する議論がありましたので、主なポイントを取り上げます。

全国的なGMP査察体制の構築

個人的には、今回の会議の一番のハイライトはこの内容です。資料はこちらの(5)が該当します。

第1回会議時の内容から変更となっており、以下の通り、より踏み込んだ制度変更提案を厚労省がしています。

第1回会議時には、都道府県の連携を強化しつつ、必要に応じてPMDAもGMP調査を可能とする、といった提案でした。

それが、今回は、GMP調査主体を基本的に都道府県からPMDAに見直す、という提案になっています。

この提案は合理的ですばらしく、ぜひ厚労省に実現してもらいたいです。なぜなら、以下が期待できます。

  • PMDAが一義的に調査主体となることで、GMP調査の質のバラツキをなくすとともに、GMP調査の専門性の維持、向上が可能
  • GMP調査の規制プロセスがよりシンプルになり、産官ともに効率的な運用が可能

こちらの記事では、議論当日の都道府県(東京都)の反対意見も掲載されています。9割以上の都道府県が反対している、都道府県の調査件数が大幅に減少する、都道府県のGMP調査体制が弱体化する、GMPの専門性の低下によるGQP調査への支障、といった点が挙げられています。

これらの反対意見は、まさに都道府県が自分たちは困るから反対と言っているだけです。GMP調査の質を上げて、国内の医薬品の品質を確保するためにどうあるべきかという視点は入っていません。

実際、都道府県はすでに、新薬承認申請時のGMP調査、生物学的製剤のGMP調査、再生医療等製品のGCTP調査、医療機器/体外診断用医薬品のQMS調査を実施していません。それでも、都道府県は業許可業務等をやってきています。

このような状況で、医薬品の一部の調査のみ都道府県で引き続き実施、というのは都道府県の既得権益/現状の維持にしか見えず、厚労省の提案のほうが非常に理があります。

確かに、都道府県にもGMP調査の専門性が高い方々がいます。そのような方に対しては、PMDAの職員として(PMDAからの委嘱により)GMP調査を実施する仕組みを用意すればよいと考えます。それにより、より高品質、効率的なGMP調査を実施する体制が日本として構築できそうです。

このように、GMP調査権限の都道府県からPMDAへの委譲は、よりよいGMP調査体制の構築のためにぜひ実現してもらいたい提案になります。

市販後安全対策

こちらは、「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」での議論を踏襲する形で、以下のような点について規制変更の提案がされており、(当日の議論も含めて)特段のサプライズはない状況です。

  • RMPの法的位置づけの明確化
  • RMPの必要性、意義に応じた柔軟な運用
  • リアルワールドデータのさらなる活用の推進
  • 副作用等報告対象の合理化

その他

骨太指針2024、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版」、規制改革実施計画について、医薬局に関連する内容が抜粋された資料が用意されています(こちら)。

骨太方針2024はこちらの記事でもまとめましたが、グランドデザインでも治験/臨床研究の環境整備を含む創薬強化に関連した内容が盛り込まれています。

また、規制改革実施計画では、プログラム医療機器(SaMD)に関する規制(例:二段階承認)がハイライトされています。

これらの情報により、2025年度に向けて厚労省(の医薬局)がどのような施策(予算措置を含む)を仕込もうとしているかが見えてきます。

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