簡単な考察:アクーゴ脳内移植用注(サンバイオ)、2024年6月20日の部会結果

サンバイオのアクーゴ脳内移植用注(再生医療等製品)に関する承認審査及び再生医療等製品・生物由来技術部会の対応は、類を見ないものでしたので、簡単な考察を残しておきます。

状況(2024年6月末時点)

本品は、2024年3月の部会でも承認審査の方向性を議論するという通常見かけない議題設定がされていました。また、その結果概要が厚労省から示されています。

薬事・食品衛生審議会 再生医療等製品・生物由来技術部会 におけるアクーゴ脳内移植用注の審議の概要について」という文書が2024年3月25日付けで公表されています。

この概要に示されているように、アクーゴは、臨床試験の結果から、一定の有効性が期待でき、安全性プロファイルを踏まえると、ベネフィットリスクバランスは承認に耐えうるものであるようです。

一方で、品質の問題により、治験に使用した再生医療等製品と市販が想定される製品が同等/同質と言えない状況になっていました。

その状況を踏まえつつ、2024年6月20日の再生医療等製品部会で承認の可否が審議され、条件(及び期限)付き承認に至っています。

承認条件は、サンバイオのプレスリリースに記載されていますが、品質の同等性/同質性を確認、報告した上で、承認事項一部変更承認申請(一変申請)を行うこと、また、承認されるまで本品の出荷を行わないこと、というものになっています。

したがって、承認はされましたがアクーゴは上市、使用できない状況が続きます。上記サンバイオの説明では、市販用の製造を2回程度行って品質データを収集し、同等性/同質性の確認を行い、2025年2月~4月の上市を目指すようです。

なお、アクーゴは6か月での承認審査を目指す先駆け指定を受けており、2022年6月に承認申請されています(関連記事)。(結局、審査期間は2年以上を要した)

所感

日本では、ある医薬品等の承認取得が難しそうな場合、厚労省/PMDAが不承認の判断をすることはほぼありません。厚労省/PMDAは、企業(製造販売業者)に承認申請の取り下げを強く促します

今回の場合、臨床的な意義は示唆されており、また、先駆け指定製品でもあり、厚労省/PMDAも対応の苦慮した様子が伺えます。

また、薬機法における再生医療等製品における承認拒否事由を踏まえても、今回の対応は致し方ない部分は大いにあるように見えます。以下が薬機法に規定されている再生医療等製品の承認拒否事由です。

第二十三条の二十五 
2 次の各号のいずれかに該当するときは、前項の承認は、与えない
一 申請者が、第二十三条の二十第一項の許可を受けていないとき。
二 申請に係る再生医療等製品を製造する製造所が、第二十三条の二十二第一項の許可(申請をした品目について製造ができる区分に係るものに限る。)又は前条第一項の認定(申請をした品目について製造ができる区分に係るものに限る。)を受けていないとき。
三 申請に係る再生医療等製品の名称、構成細胞、導入遺伝子、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能、副作用その他の品質、有効性及び安全性に関する事項の審査の結果、その物が次のイからハまでのいずれかに該当するとき。
イ 申請に係る効能、効果又は性能を有すると認められないとき
ロ 申請に係る効能、効果又は性能に比して著しく有害な作用を有することにより、再生医療等製品として使用価値がないと認められるとき
ハ イ又はロに掲げる場合のほか、再生医療等製品として不適当なものとして厚生労働省令で定める場合に該当するとき
四 申請に係る再生医療等製品の製造所における製造管理又は品質管理の方法が、厚生労働省令で定める基準に適合していると認められないとき。

このうち、品質問題は、第23条の25第3号ハの部分に該当するかが論点になってきます。そして、このハの部分は、薬機法施行規則の以下の規定をさらに確認する必要があります。

第百三十七条の二十二 法第二十三条の二十五第二項第三号ハ(同条第十一項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の再生医療等製品として不適当なものとして厚生労働省令で定める場合は、申請に係る再生医療等製品の性状又は品質が保健衛生上著しく不適当な場合とする。

アクーゴが「性状又は品質が保健衛生上著しく不適当な場合」に該当するかということになりますが、そこまでは言えなかったのだろうと考えます。

今後の品質データ次第ではありますが、サンバイオの見通しの通り、事が進むかは非常に不透明です。

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