経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太方針2025)が2025年6月13日に閣議決定され、公表されました(本文はこちら)。
昨年は「創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議」といった仕込みが事前にあり、その内容が骨太方針に反映されていました。今年は、そういった大きな仕込みはありませんでしたが、薬事・規制を含む医薬品、医療機器、再生医療等製品に関連しそうな内容をここではまとめておきます。
なお、骨太方針がなぜ重要かについては、昨年の骨太方針に関する記事で触れていますので、ご参照ください。
骨太方針2025の主なポイント
骨太方針2025の概要がこちらにありますが、医薬品等に関連する施策は「第3章中長期的に持続可能な経済社会の実現」のうち、「2.主要分野ごとの重要課題と取組方針」の「(1)全世代型社会保障の構築」に示されています。
創薬力関連
「創薬力の強化とイノベーションの推進」の項が1つ設けられて、各種施策に言及があります。「健康・医療戦略」に基づき施策を実施することが基本となっています。
昨年から引き続き、ファースト・イン・ヒューマン(FIH)試験実施施設の整備が記載されています。また、FIH施設の整備を含めて治験・臨床試験実施体制を整備も記載されており、昨年からの流れがそのまま続いています。
「承認審査・相談体制の強化」が明示されていることも重要で、引き続きPMDA用の関連予算(小児開発、希少疾病に関連した予算)が確保されることになりそうです。
その他、「ドラッグラグ/ロスの解消」、「プログラム医療機器」、「PMDAの海外拠点」といったキーワードがしっかり入ってきています。
一方で、昨年の骨太方針にはなかった内容として「休薬・減薬を含む効果的・効率的な治療に関する調査研究を進め、診療ガイドラインに反映していく」、「医療用等ラジオアイソトープの国産化及び利用促進に必要な体制整備等の取組」といった点があり、2026年度用の関連予算の確保、施策の検討が重点的に進められることになりそうです。
診療報酬(薬価を含む)
製薬業界が主張しているイノベーションの薬価上の適切な評価の実施についての記載が入りました。「2024・2025年度薬価改定において新薬創出・適応外薬解消等促進加算の対象となる革新的新薬について薬価を基本的に維持したことを念頭に置いた革新的新薬の特許期間中の対応に関する創薬イノベーション推進の観点からの検討等」という注釈が入っています。すなわち、2024年度と2025年度の薬価改定では業界に対して一定の配慮はした、今後については予断を許さないということになっています。
また、今回の骨太方針で新たに入ってきた内容として「OTC類似薬の保険給付の在り方の見直し」があり、「更なる医薬品・検査薬のスイッチOTC化に向けた実効的な方策の検討を含む」という注釈が入っています。
さらに「保険外併用療養費制度の対象範囲の拡大や保険外診療部分を広くカバーし、公的保険を補完する民間保険の開発を促す」、「当初の医師の診断や処方に基づき症状の安定している患者が定期的に服用する医薬品や、低侵襲性検体である穿刺血を用いる検査薬を含む医薬品・検査薬の更なるスイッチOTC化など、具体的な工程表を策定した上でセルフケア・セルフメディケーションを推進しつつ、薬剤自己負担の見直しを検討する」という内容も入っています。
これらの内容から、政府側としては、現在保険でカバーされている医薬品の一部(湿布等)を保険給付から外す(自己負担を10割とする)という意向が示されました。この点については、実際には中医協での議論が次の主戦場となり、日本医師会は反対するであろうことを踏まえると、今年度でどこまでの変化となるかは不透明な状況です。
その他、費用対効果評価制度について、「更なる活用に向け、適切な評価手法、対象範囲や実施体制の検討と併せ、薬価制度上の活用や診療上の活用等の方策を検討する」とされています。
その他
全世代型社会保障の構築パートに加えて、賃上げのパートにも、「医療・介護・障害福祉の処遇改善について、過去の報酬改定等における取組の効果を把握・検証し、2025年末までに結論が得られるよう検討する。」との記載があり、中医協での診療報酬改定で議論はすることも示されています。
また、DXパートでは、AI創薬の実用化支援、。医薬品や検査の標準コードのマスタの一元管理、医薬品・医療機器等の物流DXの推進に資する製品データベース構築といった点に触れられています。
関連リンク
- 経済財政運営と改革の基本方針2025 内閣府ホームページ:https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2025/decision0613.html
- 経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太方針2024) 本文:https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2025/2025_basicpolicies_ja.pdf
コメント