業界要望:2025年薬機法改正に向けた議論

2024年4月18日の令和6年度第1回厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会から、次期薬機法改正の議論が皮切りとなりました。

令和6年度第2回の会議が、2024年5月17日に開催されました。この回では関係業界からのヒアリングが実施されています。ここでは、日本製薬団体連合会(日薬連)、日本医療機器産業連合会(医機連)、日本臨床検査薬協会、再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)の要望をみておきます。

日本製薬団体連合会(日薬連)

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製造管理、安全対策に関連した制度がハイライトされています。

製造管理

「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」でも議論となった中等度変更事項の導入に言及されています。

その他、製造方法の記載方法、GMP MRAの拡大、GMP調査の効率化/国際整合が挙げられています。特に、GMP調査は品目単位から製造所単位への変更提案となっています。

安全対策

「RMP(医薬品リスク管理計画)」の法的位置づけの整理、副作用等報告制度の見直し、GVP省令における医薬情報担当者(MR)のあり方が挙げられています。

日本医療機器産業連合会(医機連)

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日薬連同様、製造管理、安全対策の要望が入っています。また、広告規制、臨床試験の関連要望も入っています。

製造管理

日薬連での医薬品の場合と同様、QMS調査の効率化/国際整合が挙がっています。医療機器側からも、QMS調査は品目単位から製造所単位に変更すべきとの指摘となっています。

安全対策

日薬連同様、不具合等報告の対象となる範囲を見直すよう要望が出ています。

広告規制

医療機器については一般消費者向けの広告を原則可能とし、一定のルールの下、正しい情報提供に努めることが重要ではないか」と提示されています。現行では、医薬品、医療機器、再生医療等製品とも一般消費者向けの広告には制限が設けられています。

また、この提案に合わせて、薬機法の広告に関する条文について、現行は医薬品と医療機器をまとめて規定していますが、別項立てとすることを要望しています。

臨床試験

リアルワールドデータの活用に関して薬機法下で要件を規定することを要望しています。また、20年以上の議論である臨床試験/臨床研究について、適用される法律・規制が異なることを問題点として挙げています。

日本臨床検査薬協会

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体外診断用医薬品の定義の見直し要望が最初に出ています。現行、「専ら疾病の診断」用とされているところ、「治療薬及びその用量調整等の選択に用いる等の医療情報の提供や、予後・リスク評価など多様化した用途で広く医療で利用されている」として、そのような用途も含めた形での定義設定を求めています。

その他、承認申請時に承認前試験の実施による感染研による「品目仕様の実地での確認」 のあり方の見直し、体外診断用医薬品のGCP省令の新設、副作用等報告ではなく不具合等報告の枠組みとすること、といった点が挙がっています。

再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)

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「治療を目的とした自家細胞加工製品の規格外品の提供を可能とする」法改正の1点に論点を絞って提案をしています。

自家細胞加工製品では、患者さんから採取された細胞・組織が原料となります。患者の全身状態や年齢、前治療歴などの影響により規格外品が発生することは避けられない一方、そのような規格外品は、既承認品の市販品として患者さんに提供することは現在の薬機法下ではできません。現行は、治験として規格外品を提供しているため、薬機法改正による新たな提供の枠組みを要望しています。

所感

医薬品、医療機器とも製造管理関連の要望の声が大きくなっています。GMPやQMSという製造管理の順守基準が品目に紐づく(承認を得るための要件となる)仕組みは、2004年の製造販売業導入に伴う薬機法改正時に導入されたものです。

GMPやQMSが品目要件となることの是非はこれまでも議論されてきています。20年の年月を経て、製造・物流のさらなる国際化を含め、外部環境の変化もあり、見直しの要望/必要性がより切迫した時期にきているよう思います。また、この要望は、薬機法の改正が必要であるため、まさにこのタイミングでの手当が可能ではある状況にはあります。

ただ、このGMPやQMSを品目要件から製造所単位の要件への改正は、非常に大きな制度変更となるため、相応の準備期間が必要となることもあり、MLHW/PMDA側がどこまで踏み込めるかは不透明です。少なくとも、中等度変更事項の導入に関する薬機法改正は着手するでしょうが。


副作用等報告/不具合等報告の安全対策関連も、各産業界が声を上げていることもあり、今回の薬機法改正のタイミングで手当てされそうです。ITの進展に伴う(MRの在り方のような)議論も、よいタイミングだと考えます。ビジネスモデルの変化に合った規制・制度となること、すなわち、IT技術等を活用した安全対策の制度枠組みについて、本会議で踏み込んで議論されることを期待しています。


ITの進展を伴う外部環境の変化という点では、医機連提案の広告規制の見直しも興味深い点です。医機連指摘のように、誰もが手軽に発信者となる現在においては、情報を出させないという方向での規制は不可能です。

したがって、適切に情報を出すためにどうするか、という観点から広告の規制・制度を考える必要があろうと考えます。この点は、医療機器に限った話ではないので、医薬品の広告規制も含めて、今回を機に広告規制改正まで踏み込めるとよいなと思います。

最後に、FIRM提案の規格外品の提供についても、今回の法改正で手当てされるべき喫緊の案件だと考えます。新たな技術の登場に伴った課題であり、制度が現実に速やかに追いつくことを期待します。

引き続き、この制度部会の議論をおっていきます。

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