アジンマの薬価算定(2024年5月薬価収載)

2024年5月15日の中央社会保険医療協議会 総会(第589回)において、2024年5月22日に新規薬価収載される品目が議論されました。

2024年の薬価算定基準見直しによる加算の恩恵を受けている品目が今回も多くあります。

その中でもアジンマ(武田薬品工業)の薬価算定は、迅速導入加算、算定薬価の観点から示唆に富む結果となっています。

アジンマは迅速導入加算対象(2品目め)

2024年4月から導入された迅速導入加算ですが、アジンマが2つめの対象品目となりました。ただし、最初の品目であるボイデヤ(アレクシオンファーマ)の加算率が10%であったことに対して、アジンマの加算率は5%でした。

ボイデヤは、「国際共同治験における日本人症例数が比較的多いことを踏まえ」加算率は10%とされました。

アジンマは、算定資料内では迅速導入加算の4要件(国際共同治験、優先審査、国内申請が欧米での申請から6か月以内、国内承認が欧米での承認から6か月以内)を満たしている旨のみが述べられています。

しかしながら、国際共同治験の日本人症例数の違いが加算率に影響を与えたのかが不明瞭です。例えば、ボイデヤの場合、第III相国際共同治験では二重盲検期で86名中12名が日本人でした(ボイデヤ錠の審査報告書)。一方、アジンマの場合、第III相国際共同治験では無作為化された55名中5名、第IIIb相国際共同治験では無作為化された36名中5名が日本人でした(アジンマの審査報告書)。

全体集団の症例数を踏まえると、アジンマでもボイデヤと違わない程度の日本人症例を組み入れているようにも思えます。

したがって、別の要素がありそうですが、その要素として承認時期が考慮されたのではないかと考えます。

ボイデヤは日本の承認が最初です。一方、アジンマは米国が2023年11月、日本が2024年3月となっており4か月程度の遅れとなっています。このような違いも考慮して加算率が違ったのではないかと推察します。

いずれにせよ、迅速導入加算の事例が早くも出てきていますので、今後の事例の集積によりどのような要素が考慮されるのかが見えてくるのではないかと期待しています。

(2024年11月14日追記)

2024年11月20日に薬価収載となる品目の一覧が出ました。この回の収載において、迅速導入加算が対象となった品目が2剤ありました。

アセノベル徐放錠とタスフィゴ錠で、いずれも日本が最初の承認国です。

アセノベル徐放錠の迅速導入加算率は5%です。第III相試験は国内2本、海外1本となっています。

タスフィゴ錠の迅速導入加算率は10%です。その理由として「国際共同治験における日本人症例数が比較的多いことを踏まえ」とされています。第II相試験が国際共同治験であり、63例中28例(約44.4%)が日本人でした。

以上を踏まえると、日本の承認が欧米より早いかは考慮のポイントではなく、あくまで国際共同治験の中での日本人症例数が肝となっているようです。日本人の割合はアジンマで約9.1%、ボイデヤで約14.0%となっていますので、10%が目安となっている可能性があります。

アジンマの算定薬価

米国の価格(839,220円)より日本の薬価(1,212,026円)が高くなりました。しかも1.4倍以上の価格となっています。

これは加算が大きく寄与しています。2024年の薬価算定基準の見直しによる点も含めて、上記迅速導入加算5%に加えて、小児加算15%、有用性加算(I)40%の合計60%の加算が付いています。

類似薬効方式で計算されており、対象となった比較薬と同程度の価格であれば米国の価格をこれほど上回ることはありませんでした。

今回の収載品の中で他に米国の価格を上回る品目はありませんでしたが、今後もアジンマのような米国価格を上回る薬価となる品目が出てくるかは注視していきます。また、そのような品目が頻発することとなった場合は、薬価算定基準の見直し議論に影響が出てくるのではないかとも考えています。

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