2024年5月8月付けで日本イーライリリーと田辺三菱製薬が「肥満症に対するチルゼパチド 承認申請および日本における販売提携のお知らせ」というプレスリリースを出しました。
日本では、肥満症治療薬としてウゴービ(ノボノルディスク)が2024年2月に発売となっています。
この肥満症治療薬市場は、今後巨大市場になることが予測されており、また、実際、ノボノルディスクやイーライリリーの業績がすでに向上してきていていますので、現状をまとめておきます。特に、ノボノルディスクは、2023年の売り上げの伸び率と利益率が製薬大手の中でトップになっています(こちら)。
肥満症治療薬の市場規模
世界の市場規模として、2030年までに少なくとも1,000億ドルに達するといった予測も出ています(こちら)。
これがどの程度の規模かというと、日本の医療用医薬品市場が2023年に11兆円程度であることから、最近の為替レートも踏まえると、肥満症治療薬の市場規模は、日本の医薬品市場より大きいことになります。
世界の医薬品市場が2021年時点で14,235億ドルといったデータもありますので、(2030年までに医薬品市場全体が伸びはしますが)肥満症治療薬が新たに相応の市場を形成していくことが予測されています。
日本では、すでに販売されているウゴービについて、ピーク時で10万人への投与、328億円の売り上げをノボノルディスクは予測しています(薬価収載時の資料より)。なお、2019年国民生活基礎調査に基づくと、肥満症での通院患者数は57万人程度となっていますので、日本の肥満症治療薬の市場規模も上振れする可能性は十分にあります。
ウゴービ(ノボノルディスク)について
ウゴービは、有効成分がセマグルチドであり、遺伝子組換えヒトグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)類縁体を有効成分とするGLP-1受容体作動薬です。肥満症治療薬として日本では30年ぶりの新薬となります。週1回の皮下投与により、食欲を抑えること等により体重減少が期待される医薬品になります(添付文書より)。
ウゴービは、2021年8月申請、2023年5月承認、2023年11月薬価収載、2024年2月発売となっています。審査期間は1年を超えており、また、承認から薬価収載までは原則60日又は90日であることから、薬価収載までも時間を要したことになります。
さらに、医薬品は薬価収載後すぐに発売となることが主ですが、ウゴービは薬価収載から発売までも少し間が空いています。薬価収載時に不服意見が出ていないことを踏まえると、収載日から3か月以内の製造販売ルールを加味して、慎重な販売体制を構築できるタイミングでの収載希望書の提出となったのではないかとも考えられます。
なお、セマグルチドは、ウゴービより先に、オゼンピックという販売名で2型糖尿病治療薬として日本でも承認、上市されています。
ちなみに、内臓脂肪減少薬「アライ」(OTC薬)がウゴービと近い2023年2月に承認されています。
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