医薬品、医療機器、再生医療等製品の規制にあたっては、厚生労働省(Ministry of Health, Labour and Welfare: MHLW)と独立行政法人医薬品医療機器総合機構(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency: PMDA)が大きな役割を担っています。
ここでは、MHLWとPMDAがどのような役割を担っているかを概括します。
厚生労働省(MHLW)
厚生労働省(MHLW)は、医薬品等の規制に限らず、日本政府の1つの組織(省)として、施策の立案、実行を担っています。そのため、厚生労働省自体は、医薬品等に限らず、幅広いテーマを担当しており、医療や保険だけでなく、介護や労働などがその所管に入っています。
MHLWの中で、医薬局各課が医薬品等の規制に関する施策を担当しています。薬機法の改正のような議論は、医薬局主導で実施されます。また、薬機法に基づく各種運用通知は、MHLWの関連部局から発出されます。また、薬機法に基づく国側の最終責任はMHLWにあります。
その他に、医薬品等の関連する施策をMHLWで担う主な部署としては、医政局研究開発政策課、医政局医療産業振興・医療情報企画課、保険局医療課といった部門があります。
医政局研究開発政策課は、医薬品等の開発推進に関連する施策を担当することから、治験環境の改善、医薬品等に関連した研究費の確保、分配といった業務を担当します。
医政局医療産業振興・医療情報企画課は、医薬品を中心とした産業振興施策を担当します。特に重要な役割としては、薬価交渉等医療保険に関する事項について、企業の窓口になります。
保険局医療課は、薬価算定等医療保険に関連した施策を担当します。
保険局医療課と医政局医療産業振興・医療情報企画課を設置することで、製薬企業が直接医療課と連絡することができない組織体制とし、利益相反や癒着が生じないようにしています。
同様に、医薬局と医政局で、規制と振興の役割を分離させることで、医薬品等の規制と振興のバランスが適切になるように設定されています。
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)
PMDAは、薬機法やMHLWの施策に基づき、科学的な議論を中心とした実務、運用を担っています。例えば、医薬品の審査を実際に行うのはPMDAになります。PMDAの審査結果を踏まえて、最終的な承認の判断を行うのはMHLWになります。
したがって、製品開発や安全対策の企業担当者は、PMDAとのコミュニケーションが主となります。医薬品等の審査、安全性情報に関する報告の受付や分析、製造管理・品質管理に関連する調査、治験関連の手続き、各種相談業務といったことはPMDAが対応します。
まとめ
MHLWとPMDAの役割分担は、MHLWが施策立案、最終責任者であり、PMDAが科学的な観点からの各種運用の対応となります。また、医療保険関係の業務は、PMDAは所管していません。
このような役割分担は、欧州におけるEuropean Medicines Agency(EMA)と欧州委員会(European Commission:EC)の役割分担に近い部分もあります。
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