2024年度の薬価算定基準見直しを受けた新基準が2024年4月1日より適用されています。今回の改定のポイントをハイライトします。資料としては、2024年1月17日に開催された中央社会保険医療協議会 薬価専門部会(第222回)にある薬-1がまとまっています。
迅速導入加算
2024年度の改定で新たに導入された加算です。「ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの解消に向けた革新的新薬のイノベーションの適切な評価」を目的として導入されたものであり、以下の要件を満たす場合に5~10%の加算が付与されます。
- 国際共同試験(日本において臨床試験が実施されている場合に限る。)により開発された品目又は日本以外の国と同時若しくは日本以外の国より先に臨床試験を実施して開発された品目
- 医薬品医療機器等法第 14 条第 10 項の規定に基づき優先審査の対象となった品目
- その効能又は効果に関し、承認申請がアメリカ合衆国及び欧州(以下「欧米」という。)より早い又は欧米において最も早い承認申請から6ヶ月以内の品目
- その効能又は効果に関し、承認が欧米より早い又は欧米で最も早い承認から6ヶ月以内の品目
日本を含む形で臨床試験を実施しつつ、欧米に対して遅れることなく承認取得まで至った品目が対象となります。また、優先審査の対象であることも条件として設定されています。
これらの条件設定は、確かに革新的な医薬品を日本で開発、また、欧米に遅れることなく開発することで付与されるインセンティブとなっています。
この迅速導入加算が最初に適用された品目は、2024年4月17日に薬価収載されたボイデヤ錠(アレクシオンファーマ)でした。「国際共同治験における日本人症例数が比較的多いことを踏まえ」加算率は10%とされています。
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001243201.pdf
その他の薬価算定基準の見直しポイント
以下のような点が挙げられます。
- 収載後の外国平均価格調整:これまでは原価計算方式だけだったものが、類似薬効比較方式(Ⅰ)で算定される品目についても適用されることになります。日本で先行して薬価が決まった場合に、外国の価格が日本より高い場合に120%を上限に日本の薬価も上振れする品目の範囲が拡大されました。
- 新薬創出等加算の企業指標の廃止:薬価維持の維持に寄与する新薬創出等加算について、企業指標が廃止されました。ただし、引き続き、企業要件(未承認薬検討会議等への対応)は適用されます。
- 小児加算での新薬創出等加算の適用:新規収載品での加算、効能等追加による加算のいずれの場合も適用されます。小児用医薬品の開発インセンティブの一助となることが期待されています。
- 成人と小児の同時開発に係る評価:こちらも小児用医薬品の開発インセンティブとして導入されたものです。こちらの記事でも触れていますが、成人用の医薬品開発中に小児用医薬品の開発計画について、PMDAの確認を受けた場合に、小児用の開発に関連した承認を取得すると加算が優遇されます。
- 後発品企業に対する企業指標の導入:後発品の安定供給が確保できる体制や安定供給に必要な情報の可視化の対応状況に基づき、後発品企業を評価し、薬価上の措置が講じられることになります。
その他、薬価算定基準の改定ではないですが、後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)に対して、選定療養が適用されることになりました(先発品と後発品の差額の一部が患者負担となる)。この仕組みの導入により、関連する医薬品のマーケットシェアに影響が出てくる可能性があります。
選定療養の対象となる品目は、MHLWのホームページの「対象医薬品リストについて」の項から確認できます。
関連リンク
薬価算定の基準について(2024年2月14日付け、保険局長通知):https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001218705.pdf
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