2024年11月13日に開催された中央社会保険医療協議会 総会(第598回)にて、2024年11月20日薬価収載新医薬品の薬価算定結果が示されました。興味深い品目がありましたので、まとめておきます(算定結果の資料はこちら)。
迅速導入加算
2024年4月から導入された迅速導入加算ですが、2024年5月薬価収載のアジンマ(2剤目)に続き(関連記事)、今回は2剤で迅速導入加算が適用されました。
アセノベル徐放錠とタスフィゴ錠で、いずれも日本が最初の承認国です。
アセノベル徐放錠の迅速導入加算率は5%です。第III相試験は国内2本、海外1本となっています(アセノベル徐放錠の審査報告書より)。
タスフィゴ錠の迅速導入加算率は10%です。その理由として「国際共同治験における日本人症例数が比較的多いことを踏まえ」とされています。第II相試験が国際共同治験であり、63例中28例(約44.4%)が日本人でした(タスフィゴ錠の審査報告書より)。
以上を踏まえると、日本の承認が欧米より早いかは考慮のポイントではなく、あくまで国際共同治験の中での日本人症例数が肝となっているようです。なお、日本人の割合はアジンマで約9.1%、ボイデヤで約14.0%となっていますので、10%が目安となっている可能性があります。
一方で、ジャカビの剤形追加でも迅速導入加算が付与されました(外部記事)。
ジャカビは、今回、小児の適応追加とともに小児用製剤が承認されました。そこで、小児製剤が新たに薬価収載されましたが、迅速導入加算10%と小児加算5%が適用されました。報告品目・新キット製品の薬価収載で、迅速導入加算が適用されたのは同剤が初めてとのこと。
この迅速導入加算ですが、国際共同治験への日本への参加、オーファン指定品(優先審査)に加えて、欧米の申請から6か月以内の申請を満たした上で、承認は日本が最初だったということです。この場合で5%ではなく、10%となっています。
以下は今回のジャカビの審査報告書の抜粋になります。日本人症例数が比較的多いかどうか解釈が難しいところですが、G試験は比較的、日本人症例が登録されているようにも考えられます。
アセノベル徐放錠
迅速導入加算の適用に加えて、本剤の有用性加算は45%となっています。その理由は以下となっています。
「本剤はシアル酸を補充することにより効果を示すことが期待されている新規作用機序の薬剤であること、対象疾患は国内外において治療法が存在しない重篤な疾患であること、また、本剤は補充療法であり他に治療法がないことから標準的治療法となると考えられることから、有用性加算(Ⅰ)(A=45%)を適用することが適当と判断した。」
確かに薬価ルール上、これらのポイントが該当します。一方で、本剤については、海外第III相試験において有効性が検証されず、対象患者の絞り込みを行った追加の国内第III相試験も踏まえて、一定の有効性が認められた(統計学的な仮説検定は行われていない)として承認されています。
希少疾病であり、臨床試験の実施が困難な状況にあって、統計学的な検証が難しい場合であっても、高い加算が適用された興味深い事例となっています。
また、本剤は原価計算方式で薬価が計算されています。その中で、企業側から不服意見として出された意見の1つが、「承認申請に必要な試験データの対価である大学へのロイヤリティ」を研究開発費として計上できるのではないかというものです。
この点に関して、算定組織側からは「国内第Ⅲ相試験等は主に公的研究費により実施されたものであり、大学へのロイヤリティは研究開発費用としては認めないことが妥当」とされています。これはもう、それはそうですよね、という感じがします。
ケサンラ点滴静注液
レケンビ点滴静注に続く「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」用の薬剤が薬価収載、上市されることとなりました。
ピーク時の市場予測は、2.6万人、796億円となっています。
レケンビを比較薬とした類似薬効比較方式(I)にて計算されていますが、有用性加算(II)が適用されています。評価されたポイントが、投与期間が原則18か月間とされた上で、投与開始後12か月を目安に行われる評価に基づき投与を完了する可能性があることです。レケンビは18か月間の投与であり、この違いに基づき、「既存の治療方法に比べて効果の発現が著しく速い若しくは効果の持続が著しく長い、又は使用に際しての利便性が著しく高い」の項目に該当すると判断されています。
珍しい利便性での加算となっています。なお、レケンビは2週に1回の点滴静注ですが、ケサンラは4週に1回の点滴静注となり、ケサンラのほうが来院頻度は低減します。この点は考慮されなかったようです。
テッペーザ点滴静注
活動性甲状腺眼症という希少疾病を適応とする国内初の薬剤になります。
ピーク時の市場規模予測は、3.4千人、494億円となっており、希少疾病ながら大きな市場規模が予測されています。
比較薬は当然ないので、原価計算方式での薬価計算となり、有用性加算(I)45%が適用されています。ただし、原価計算方式での加算係数は0なので、実際の薬価には反映されません。
トロデルビ点滴静注
「未承認薬検討会議で開発要望があり、申請者が米国会社の買収後に本邦での開発に着手し、ドラッグロス品目の着実な開発」に貢献したとして1ポイント(5%)の上乗せ計上がされています。
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