アムジェン社のタルラタマブは、DeLLphi-301試験(第2相試験)の結果をメインに、進行・再発の進展型小細胞肺癌(SCLC)を適応として、2024年5月に米国で承認されました。米国での販売名はImdelltraです。
二重特異性T細胞誘導分子製剤として期待されていますが、米国での審査において、治験上の問題が大きな議論になっていたようです。
以下の記事がその点を指摘しています。
To approve Amgen’s lung cancer med Imdelltra, FDA saw past ‘large number’ of missing adverse events:https://www.fiercepharma.com/pharma/approve-amgen-lung-cancer-med-imdelltra-fda-large-number-missing-adverse-events
FDAの審査報告書に今回の問題が記載されていることから明らかになっています。(審査報告書はこちら)
FDAが、韓国のある治験実施施設に対するGCP調査を実施した中で問題が発覚しています。DeLLphi-301試験の被験者登録が220名の中、最終的には393件の有害事象の未報告がアムジェン社によって特定されました。
該当の治験実施施設からは、データ入力担当者の不在(人手不足)により対応できていなかったとの説明があったようです。
FDAからの指摘を受けて、アムジェン社が韓国の治験実施施設を中心に確認を行い、さらに未報告に有害事象が特定されたことから、試験のすべての施設に対して確認を行うまでに至っています。
FDAの審査報告書にもありますが、DeLLphi-301試験における被験者の登録割合は、韓国が30%で最も高く、次いで、スペインの18%、日本の11%となっています。
最終的に未報告だった有害事象が、有効性及び安全性に影響を与えるものではなかったとの結論に至っています。
タルラタマブは、日本でも希少疾病用医薬品の指定を受け、2024年5月に申請されています。(外部記事より)
FDAとの対応である程度の問題整理、改善措置、予防措置が特定されているようですが、このGCP問題を受けて、日本での審査も相応の議論が行われるのではないかと思います。
韓国は治験環境がよいと言われていますが(例)、韓国の治験状況が本当によいのか、また、治験の品質ではリスクベースドアプローチの導入の機運が世界的に高まっていますが、韓国に限らず治験の質の確保をどのように実施していくべきか、本件は一石を投じる事例になるかもしれません。
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