医療用医薬品の供給停止及び薬価削除について(2024年8月7日付け通知)

後発用医薬品の安定供給課題に端を発した「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」(関係者会議)での議論を受けて、2024年8月7日付けで「医療用医薬品の供給停止及び薬価削除について」という通知が発出されました。(通知はこちら

通知の内容

この通知では、供給停止及び薬価削除に関する手続きの明確化と簡素化が示されました。

関連会議第12回の資料に変更前後の手続きの流れが図示されています。

明確化のポイントとしては、以下が挙げられます。

  • 供給停止前に際して代替企業の了承取得のための様式設定
  • 供給停止に際して関連学会の了承取得のための様式設定
  • 代替品の考え方:同一成分である必要はない
  • 関連学会の考え方:適応外使用に関連する学会も把握していれば対応が必要
  • 関連学会のリスト化
  • 厚労省からの各種連絡の時期、内容の明示化

簡素化のポイントは、代替品が存在する場合であって、過去5年間の平均シェアが3%以下の場合は、代替企業及び関連学会の了承は不要(文書取得は不要)ということです。

その他、この通知では、「安定供給確保のための少量多品目生産の適正化」に対応するものである場合はその旨を明確にするように求めています。

所感

この通知が企業、学会、厚労省の業務効率化や負担軽減につながることはなく、引き続き、供給停止及び薬価削除には相当の労力が必要となってきそうです。

手続きの簡素化となっていますが、簡素になっていません。

企業は、シェアに関係なく、該当品目に限らず関連学会との関係が全くなくなる場合でない限り、他品目への影響を含め当該学会との良好な関係性の保持を目指して、実質的に関連学会との事前相談は避けられないでしょう。また、ごくごく一部の本質的ではない部分のみを不要としていることから、実質的な簡素化からは程遠い内容になっています。

そして、手続き自体も、細かい対応が明文化されましたが、抜本的に変更されておらず、引き続き、供給停止から薬価削除まで数年の時間を要する対応になっています。

さらに、そもそも医師会疑義解釈委員会の関与が引き続き不透明です。

第11回会議の議事録にもありますが、現状、厚労省による関連学会への意見聴取は、医師会疑義解釈委員会を介して行われています。

上記に示した検討会資料において、厚労省は、現状資料でも意図的にその点に触れていないのではないかと考えます。以下は2016年時の厚労省資料になりますが、疑義解釈委員会の関与が示されています。

日本製薬団体連合会の「ジェネリック医薬品供給ガイドライン」(2024年1月版)でも、供給停止時、薬価削除時のいずれのステップでも疑義解釈委員会の関与が示されています。

さらに、この疑義解釈委員会が審議を行っているように、供給停止にあたって一定の影響力を発揮しようとしてきたことが示唆されます。

関係者会議及び今回の通知では、この疑義解釈委員会の関与に触れることはなく、議論、対応が進められており、明確化といっていることも茶番のようになっています。

総じて、今回の通知の意義は感じられませんでした。

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