使用成績調査の通知及び事務連絡(2024年7月18日付け)

ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの解消や創薬力強化を目指して薬事規制関連の議論を進めるために、「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」が2023年5月~2024年3月に開催されてきました。

2024年4月24日にその検討会の報告書が公表されましたが、26ページから使用成績調査のあり方(及びリアルワールドデータの活用)が記載されており、対応方針が示されていました。(関連する記事はこちら:使用成績調査の議論

この対応方針を踏まえて、2024年7月18日付けで以下の文書が発出されました:

この課長通知及び事務連絡により、使用成績調査に関して、運用の改善が期待できますので、ポイントをまとめておきます。

製造販売後調査等について

通知により、治験症例数が少ないこと(日本人を含む)のみをもって、製造販売後調査等が求められるものではないことが明示されました。また、重要な特定されたリスクの頻度調査のための使用成績調査をけん制する追記となっています。

「単に治験の症例数(全体又は日本人集団)が少ないことや一部の患者集団における情報が不足していることのみが懸念事項である場合には・・・・一律に調査又は試験を実施する根拠となるものではない。なお、使用成績調査は、重要な特定されたリスクについて、その頻度調査を目的として行うことの意義は限られている。」

上記追記については、検討会の報告書の方向性からは若干のトーンダウンがあるようにも見受けれられます。検討会の報告書では、使用成績調査は「基本的には、重要な潜在的なリスク、重要な不足情報に関する調査を目的として行うことが想定される」と記載されていましたが、通知では「意義は限られている」(ものの可能性を強く排除するものではない)までに留まっています。したがって、PMDAの運用において、どこまで意味のあるリサーチクエスチョンに基づき使用成績調査を求めるようになるのかは注視が必要です。

次に、非常に重要な点ですが、以下のように、再審査は、製造販売後調査等の実施に紐づかない旨が明確に示されました。

「再審査の対象とされた新医薬品について、法令上、一律に製造販売後調査等を実施することが義務づけられているとは解されない。また、製造販売後調査等を実施することが再審査期間の付与の前提となるものではない。」

法令上の整理は今回変わったわけではありません。PMDAが「製造販売後調査等を実施することが再審査期間の付与の前提」のような運用を行ってきたことを是正するに至ったということになります。

最後に、製造販売後調査等の検討時期について、承認前に限らず、市販後に新たな懸念が出た場合に検討を行うべき旨が明示されました。こちらも、本来あるべき調査検討の対応になったと考えられます。ただし、「(承認前には骨子のみの検討とし、詳細な実施計画については承認後に検討する場合もある。)」との記載があることに留意が必要です。詳細な実施計画の検討にあたってPMDAから(有料)の相談を別途求められるのではないかと考えられます。

全例調査について

全例調査は「原則として、単に日本人の治験の症例数が少ない/ないことのみを理由としては行わない」旨が明示されました。これにより、全例調査という目的、効果が不明瞭な中で、医療機関、製造販売業者に相応の負担が発生する調査の要否がより意義のあるものに変わっていくことが期待できます。

また、全例調査がリスク最小化を目的するものではない旨も明確にされました。さらに、旧事務連絡にはあった「早期に」(情報収集を行う)という記載(目的)が削除されています。こちらも検討会での議論を踏まえたものであり、全例調査が本来、どのような目的で実施されるべきなのか、頭の整理が進められた結果になります。

所感

今回の通知及び事務連絡は、全例調査を含む使用成績調査がより意義のある方向に進められそうな、非常に期待できる改正となっています。

一方で、先の記事でも記載しましたが、市販直後調査の意義、これまでの成果(効果)についてはここまでで十分に検証、議論されているとは言えない状況です。今回の事務連絡で追記された部分にも、市販直後調査がリスク最小化に資する旨があります。この点が、真にそうであるのか、関係者間で問題意識をもって引き続きフォローされることを期待します。

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