小児用医薬品開発の追加インセンティブ

2025年薬機法改正に向けた議論が開始されており、論点の1つとして小児用医薬品開発の計画策定の努力義務化が提示されています。
一方で、この点については、「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」での議論を踏まえて、一時的に運用上の手当はされたことから、その内容をここで整理しておきます。

運用上の手当の内容

関連する通知は、以下の4つになります。

これらの通知に基づき、成人用の医薬品開発中に小児用医薬品の開発計画について、PMDAの確認を受けた場合に、小児用の開発に関連した承認を取得すると薬価上の優遇が受けられます(小児加算が受けられます)、という手当がされています。

医薬品課長通知と関連する事務連絡では、PMDAの確認を受けるべきタイミング、確認対象となる開発の範囲、確認のための手続き(新設されるPMDA相談)に言及されています。

保険局長通知では、小児加算の項に以下の記載があります。
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「ただし、「成人を対象とした医薬品の開発期間中に行う小児用医薬品の開発計画の策定について」(令和6年1月12 日付け医薬薬審発 0112 第3号厚生労働省医薬局医薬品審査管理課長通知)に基づき独立行政法人医薬品医療機器総合機構の確認を受けた小児用医薬品の開発計画に基づき遅滞なく開発が進められ、承認を受けた品目については、この限りでない。」
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この記載により、PMDAの確認を受けた小児用の開発の場合は小児加算の対象となる可能性があります。

小児加算とは?

小児(幼児、乳児、新生児及び低出生体重児を含む)に対する効能・効果や用法・用量が明示的に含まれた医薬品の薬価を算定する際に加算される可能性がある加算です。

加算率は5~20%の範囲となります。小児加算は、新規収載時/初回薬事承認時のみならず、薬価改定時/効能追加承認等時にも適用されます。
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001120014.pdf

例えば、2024年度の改定時には、改定時加算の対象であった品目が13成分ありましたが、そのうち11成分が小児加算の適用となっています。今回の改定では加算を充実させたこともあり、9成分がその結果として加算の対象となっています。また、今回の改定時加算で特筆すべきは、ジャカビ錠(ノバルティスファーマ)では、希少疾病用医薬品であることによる市場性加算(I)と小児加算が同時に加算されたことであり、このような2つの加算が認められることを示す事例となりました。
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001191743.pdf

今回の運用上の手当は、小児用医薬品の開発推進につながるか?

米国や欧州では小児用医薬品開発に対して、義務を課すことで開発を促そうとしていますが、開発が進みにくい状況が続いています。日本では、義務ではなく、インセンティブを付与する形での開発推進というアプローチをとっていることは一定の評価ができると考えます。

一方で、この加算が決め手となり小児用医薬品の開発が進むかと言われると疑問が残る部分ではあります。加算率の拡大、より長期の薬価維持による開発投資の回収や次の投資資金の捻出、といったインセンティブに加えて、患者数、治験参加者数に限りがある中でどのようなデータにより小児用医薬品を承認すべきか、といった点をさらに議論、整理していくことが不可避だと考えます。

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