医薬品、医療機器及び再生医療等製品の併用薬に関する承認申請等の取扱いの変更(2024年5月31日より)

医薬品、医療機器及び再生医療等製品の開発に用いる併用薬の薬事上の取扱いについて、大きな変更となる通知が2024年5月31日付けで発出、適用となりました。

この通知は「他の医薬品を併用する医薬品、医療機器及び再生医療等製品の承認申請等の取扱いについて」(2024年5月31日付け、医薬局医薬品審査管理課長、医療機器審査管理課長、安全対策課長の連名通知)です。

医薬品等の開発において、併用される医薬品(併用薬)が未承認であったり、適応外であったりする場合があります。この通知が発出される前までは、このような医薬品は、治験において被験薬として扱うとともに、開発された医薬品等(主薬等)の承認取得、上市に合わせて、併用薬も承認申請を行って承認を取得するといった薬事的な対応が必要でした。

今回の通知により、併用薬に関するこのような薬事対応がより柔軟な形となることが期待できます。

併用薬の取扱いの変更のポイント

承認申請等薬事対応

主薬等の承認事項や添付文書に適切に規定されることで、併用薬は承認申請が不要となります。

ただし、併用薬の添付文書において、主薬等との併用に関する注意喚起は必要になります。しかし、その注意喚起も主薬等の添付文書を参照する旨の言及でよい可能性があることが通知上示されています。

また、併用薬の添付文書の改訂をPMDAと相談したい場合は、医薬品手続相談でよいこととされました。医薬品手続相談は「医薬品の承認申請のための臨床試験に関する手続き等について相談をうけ、関連諸法令、通知等に基づき、指導及び助言を行うもの。データの評価を行うものは該当しない。」とされており、随時受付の簡便な相談(15万円程度)になります。

したがって、これまでの併用薬での承認事項一部変更申請(一変申請)を求められられていた状況と比べると、薬事的手続きは相当簡素化されます。

治験対応

主薬等の治験において被験薬以外の治験使用薬」として位置づけてよいとされています。

したがって、被験薬のような白箱を用意して、治験依頼者から治験実施医療機関に提供するといった負担が不要となります。

また、被験薬以外の治験使用薬としていた場合にあっても、もし併用薬の一変申請がしたくなった場合は、そのような一変申請も受け入れられる旨が通知で明示されています。

ちなみに、希望があれば、このような併用薬を被験薬として扱ってもよいこととされています。

今回の変更の対象

ただし、今回の通知の運用について、対象となるかどうかは個別判断の側面があり、該当性についてはPMDA相談が推奨されています。

該当性のPMDA相談には、事前面談の枠を使います。(随時受付、無料、記録なし

通知の適用範囲となりそうな事例としては、主薬等の投与により懸念される有害事象のために併用薬を使用する場合、主薬等の適応疾患への使用を目的として併用薬を使用する場合、が挙げられています。

一方、適用範囲外の事例としては、未承認薬の場合、投与経路が異なる場合、用法・用量が既承認のものと大きく異なる場合、対象疾患が併用薬の既承認の効能・効果と大きく異なる場合、といった点が挙げられています。

初回承認時の再審査期間が満了していない場合も挙げられていますが、この点は実態に応じた判断も明示的に想定されることが記載されています。

過去の運用の事例(一変申請の事例)

併用薬で一変申請が行われている事例としては、アクテムラ(トシリズマブ)があります(アクテムラの審査報告書より)。再生医療等製品であるキムリア(主薬等)の承認、上市に合わせて、「悪性腫瘍治療に伴うサイトカイン放出症候群」(承認時の適応は「腫瘍特異的T細胞輸注療法に伴うサイトカイン放出症候群」)の承認を取得しています。

キムリアに限らず、CAR-T細胞療法ではサイトカイン放出症候群が高頻度で発生します。アクテムラは、キムリアの治験において、この有害事象の管理のために併用されていました。

そして、その治験結果に基づき、上記適応に関する一変申請、承認取得にいたっています。

今回の通知を踏まえると、この事例におけるアクテムラは、一変申請不要の添付文書改訂対応でよし、となる可能性があります。(併用薬であるアクテムラの一変申請を拒むものでもありませんが)

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