経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太方針2024)が2024年6月21日に閣議決定され、公表されました(本文はこちら)。
そこで、薬事・規制を含む医薬品、医療機器、再生医療等製品に関連しそうな内容をここではまとめておきます。
骨太方針2024の主なポイント
骨太方針2024のうち、医薬品、医療機器、再生医療等製品に関連する内容は、主に40ページからの「主要分野ごとの基本方針と重要課題」に記載されています。さらに、43~44ページには「創薬力の強化等ヘルスケアの推進」の項が立っています。この項を中心に、以下でポイントをハイライトします。
構想会議の中間とりまとめの反映
まず、特筆すべきは、「創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議の中間とりまとめ」を踏まえて、FIH試験の実施を臨床試験体制の整備等、国際水準の研究開発環境の実現に取り組むべき旨が示されていることです。
この構想会議の中間とりまとめのポイントは、こちらにまとめましたが(以下は概要)、予想通り、構想会議の内容をベースとした施策、予算措置が進んでいくことになりそうです。
薬事関連トピック
次に、「ドラッグロス等への対応やプログラム医療機器の実用化促進に向けた薬事上の措置を検討し、2024年末までに結論を得るとともに、承認審査・相談体制の強化等を推進する」との記載があることも重要です。
「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」での各種施策や現在進行中の薬事制度部会での議論に基づき対応していく旨が明確に示されたことになります。
また、PMDAの体制強化も明示されましたので、2024年7月1日により導入される小児用医薬品開発計画確認相談、希少疾病用医薬品優先審査品目該当性相談等に対する補助が来年度も実施される可能性が高そうです。
さらに、2024年1月より改正された希少疾病用医薬品等の指定制度が運用されていますが、優先審査及び優先相談の対象は「従前の希少疾病用医薬品の指定の基準を満たすものに限るものとする」とされています。(関連記事)
この対応は、PMDAのリソースの問題によるものであり、1年後を目途に見直しが検討されることとなっています。したがって、今回の骨太方針にPMDAの体制強化に関する文言があることは、この部分の手当の可能性が少し上がったのではないかと考えています。
診療報酬(薬価)
骨太方針策定前にいろいろと政治的駆け引き、ロビー活動が行われていたことが各所で報じられていましたが、結果として以下のような文言が入っています。
- 「費用対効果評価の更なる活用の在り方について、医薬品の革新性の適切な評価も含め、検討する」
- 「薬剤自己負担の見直しについて引き続き検討を進める」
- 「イノベーションの進展を踏まえた医療や医薬品を早期に活用できるよう民間保険の活用も含めた保険外併用療養費制度の在り方の検討を進める」(構想会議の中間まとめの内容)
- 「2025年度薬価改定に関しては、・・・・その在り方について検討する」
総じて、財務省(財政審議会)が踏み込みたい内容まで十分に踏み込めてはおらず、産業界側からするとよかったとは言えないまでも、悪くないところで決着したと評価しているのではないかと思います。
その他
がん対策、循環器病対策、難聴対策、難病対策、移植医療対策、慢性腎臓病対策、アレルギー対策、依存症対策、栄養対策、睡眠対策、COPD対策、感染症対策、更年期障害、骨粗しょう症等に対する女性の健康支援
と各種疾患に対する予算は引き続き確保されそうです。
また、医療用ラジオアイソトープについて、国産化のための体制整備を引き続き行うこととされており、特に、国立がん研究センターにおける試験体制の整備が重要であることが入っています。また、「医療用等ラジオアイソトープ製造・利用推進アクションプラン」(令和4年5月31日原子力委員会決定)の改定に向けた議論を始める旨も示されています。
その他、医薬品等の規制に直接言及するものではないですが、地域医療構想について、2040年を見据えて「法制上の措置を含めて検討を行い、2024年末までに結論を得る」とされています。医薬品等の事業を行っていくにあたって、この議論は中長期的に影響があると考えています。
なぜ骨太方針が重要か
最後に、(自民党が与党であれば)毎年6月に閣議決定、公表される骨太方針がなぜ重要なのかを一言書いておきます。
骨太方針は、閣議決定されるように、政府としての決意表明になります。したがって、次年度に日本政府が重点的に何を実行するかが骨太方針で分かることになります。
そして、骨太方針の内容を踏まえて、次年度予算の要求のための事業の仕込みを各省庁が実施することになります。次年度予算要求にあたって、各省庁は財務省との折衝が発生します。骨太方針に記載のある内容は、(政府がやると言っている内容になるので)財務省がゼロ回答となることはまずありません。
したがって、各省庁は、実行したい施策に関連する内容を骨太方針に盛り込むことが重要になります。
なお、骨太方針に記載するかも調整が入ってきますので、さらに骨太方針前に各種会議を行って内容をまとめたりしています。創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議の中間とりまとめが、まさにそのような役割を担いました。この構想会議でまとめ上げた内容が骨太方針に反映され、今後、予算を伴う施策に反映されていくことになります。
関連リンク
- 経済財政運営と改革の基本方針2024 内閣府ホームページ:https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2024/decision0621.html
- 経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太方針2024) 本文:https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2024/2024_basicpolicies_ja.pdf
- 創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/souyakuryoku/index.html
- 創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議 中間とりまとめ:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/souyakuryoku/pdf/chuukantorimatome.pdf
- 創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会 報告書:https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001248959.pdf
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