エヴキーザのシミュレーション結果による添付文書改訂(2024年5月10日掲載)

医薬品の添付文書の改訂のうち、「PMDAの医薬品添付文書改訂相談(対面助言)を利用して、製造販売後臨床試験等の結果に基づき有効性・安全性に係る評価を行い、添付文書の改訂が可能と判断されたもの」が、PMDAのホームページに掲載されています。

市販後に得られたデータに基づき、有効性や安全性に関する添付文書情報を改訂する対応になりますので、企業は前向きにこの枠組みを活用することを検討する傾向にあると考えます。

医薬品の添付文書改訂の傾向」で相談の枠組みと新たなPMDAの動向が見られたロンサーフ配合錠を取り上げました。

今回、2024年5月10日掲載分のエヴキーザ(Ultragenyx Japan)も、最近のPMDAの動向変化を示唆する興味深い事例になっています。

エヴキーザの添付文書改訂内容

こちらが改訂の概要になります。

効能又は効果に関連する注意において、「5歳未満又は体重15 kg未満の患者における有効性、安全性は確立していない。」の記載を削除する改訂となります。

したがって、5歳未満等の患者さんにより使いやすくなる改訂(薬剤の対象集団が拡大する改訂)とも言えます。

この改訂ですが、5歳未満等の患者さんの臨床データ(投与実績)に基づくものではありません。薬物動態、薬力学モデルを活用したシミュレーションの結果に基づく対応です。シミュレーションから、5歳未満の患者における曝露量及びLDL-Cの低下効果(臨床的意義)は5歳以上の患者と大きく異ならないと推定されたことをもって、改訂となっています。

臨床データなし、シミュレーションの推定のみで了とするPMDA判断は、これまでなかなかなかった対応です。

また、この薬剤の場合、承認審査の段階で5歳未満等の患者さんへの対応、シミュレーションを活用した検証が議論されています。(審査報告書より)

この薬剤は、ホモ接合体家族性高コレステロール血症を対象としています。ホモ接合体家族性高コレステロール血症は指定難病であり、国内では140人程度と非常に希少な疾患となっています(厚労省の難病指定のホームページより)。さらに、臨床試験の段階で、5歳以上11歳以下の日本人患者さんは登録されませんでした。

この疾患に対するアンメットニーズは存在する一方、5歳未満の国内外の患者さんは極めて限定的であることを踏まえると、追加の臨床試験の実施は現実的ではなく、今回のPMDAの判断は妥当なものだと考えます。

1点気になるのは、この薬剤の承認2024年1月、今回の添付文書改訂に関するPMDAの報告書が2024年4月付けであることを踏まえると、承認審査中にシミュレーションに基づく報告書をまとめ上げることはできなかったのだろうか、ということです。

いずれにせよ、希少疾病という特性も踏まえつつ、シミュレーションを活用した現実的かつ合理的な判断がなされた事例と言えそうです。

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