EMAがEUでのリアルワールドエビデンス(RWE)の活用状況に関する3回目の報告書を公表しました(こちら)。
ここでは、その報告書の内容の概要をまとめます。なお、RWEに関するEMAの取り組みに関する情報は、こちらのEMAのホームページに情報がまとめられています。
RWEの活用分野と具体的な事例
研究の主な目的は以下の通りでした:
薬剤使用実態調査(42%)
安全性評価(24%)
疾患疫学(24%)
主な活用事例は以下が挙げられています:
- ドキシサイクリンおよびGLP-1受容体作動薬と自殺念慮の関連性評価
- CGRP拮抗薬と不眠・勃起障害・高血圧の関連性評価
- サル痘(mpox)ワクチンの有効性と安全性評価(ドイツおよび米国で実施)
- RSV(呼吸器合胞体ウイルス)感染症の疫学調査
- ADHD治療薬やGLP-1受容体作動薬の使用動向調査による供給不足リスクの把握
医薬品開発におけるRWEの役割
今回の報告では、特に医薬品開発関連では以下のような事例が含まれていました。
CHMPからの依頼により、欧州6か国における肥大型心筋症(HCM)及び閉塞性HCMの有病率を推定する研究が実施され、承認審査に活用されました。
他にもCHMPからの依頼による研究として、1型糖尿病、閉経後女性の治療パターン、BCG耐性膀胱がんの疫学などが調査され、開発戦略の立案に役立ったとされています。
加えて、HTA機関と連携した事例として、進行性非小細胞肺がん(NSCLC)や多発性骨髄腫における治療パターンと生存率の評価が行われ、HTA評価や価格交渉の準備に活用されたことが示されています。
運用面での進展と今後の展望
例えば、PDCOの依頼による小児における抗HIV薬の使用実態を評価する研究が実施中となっています。しかしながら、小児では実施困難な研究が多数であったように、データソースの多様化と拡充(小児・がん領域)が課題となっています。
また、RWEの研究の迅速化も期待されています。特に、研究の実施にあたっての倫理・科学的審査の迅速化(2〜3か月→0.5〜1か月)が期待されています。
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