2025年度薬価改定(中間年改定)及び「創薬支援基金(仮称)」

2024年12月25日の中央社会保険医療協議会総会(第601回)にて、「令和7年度薬価改定の骨子(案)」が了承されました。

令和7年度予算編成の厚労大臣と財務大臣の「大臣折衝事項」(令和6年12月25日厚生労働省)に基づき、2025年度の薬価改定の方針が示されています。

2024年12月25日の「福岡大臣会見概要(財務大臣折衝後)」にあるように、厚労省(及び財務省を含む政府)としては、「創薬イノベーションの推進」、「医薬品の安定供給確保」、「国民負担の軽減」の観点から、「品目ごとの性格に応じて(薬価改定の)対象範囲を設定」しています。

一方で、製薬業界(と最近の国民民主と立憲民主)は、イノベーションの適切な評価を阻害するものとして「中間年改定」をそもそも実施すべきではないというスタンスであり、2025年度薬価改定では、その意向が全く反映されなかったことになります。

その結果、製薬協は単独声明PhRMA及びEFPIAは共同声明を発表するに至りました。いずれも中間年改定に反対ではあるものの、製薬3団体が連名とならなかったのは、「創薬支援基金(仮称)」に対するスタンスの違いではないかと推察されます。

2025年度薬価改定(中間年改定)のポイント

中間年改定の実施そのものに加えて、製薬業界が懸念するポイントとしては、PhRMA及びEFPIAの共同声明にて、以下の点が指摘されています。

  • 新薬創出等加算の累積額控除(中間年改定初)
  • 特許期間中の医薬品に対して平均乖離率5.2%(または平均乖離率の0.75倍)を超える品目で薬価改定
  • 2026年度(令和8年度)に向けた費用対効果評価の拡大の検討
  • 2027年度(令和9年度)中間年改定に向けた市場拡大再算定ルールの適用の検討

厚労省としては、「既収載品の薬価改定時の加算」を中間年改定でも適用することが「創薬イノベーションの推進」に資する内容と考えています(福岡大臣会見概要(財務大臣折衝後)より)。

「創薬支援基金(仮称)」

2025年度薬価改定(中間年改定)と直接関係ありませんが、PhRMA及びEFPIAの共同声明にて、以下の点が指摘されています。

”政府が「創薬支援基金(仮称)」を創設し、新薬創出等加算品目(日本において臨床的に革新的な医薬品として厚生労働省が加算を付与したもの)を有する企業の収益に応じ、課税のような形で強制的に拠出義務を課すことで、開発初期段階のパイプラインを有するスタートアップ企業を支援する意向である”

PhRMA及びEFPIAは、この施策に明確に反対との意思表示を行いました。(製薬協は言及なし)

再度福岡大臣会見概要(財務大臣折衝後)の内容になりますが、この支援基金の構想に関連する政府(厚労省)側の言及としては、以下のものがあります。

我が国の創薬力強化のための安定的・継続的な支援の在り方について、法改正までを目途に検討し、結論を得る

この施策は、「創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議」での官民協議会の議論、骨太方針2024、「創薬エコシステムサミット」の流れを受けて厚労省内で検討されてきたものと考えられます。

以下、「創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議」中間とりまとめを踏まえた政策目標と工程表からの資料になります。

この時点ですでに、どのように民から資金を引っ張ってくるかの検討が厚労省内で行われていたであろうことが示唆されています。

その結果、「課税のような形で強制的に拠出義務を課す」仕組みを製薬業界に打診したのでしょう。新薬創出等加算を付しつつ、課税(義務)で回収するというのは、結局、イノベーションを評価せず、加算せず、ということになるので、とても筋の悪い施策になっています。

この施策の議論、情報は限られており、官民協議会等を通じて、十分な検討が行われることが期待されます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました