日本の新医薬品の承認申請から薬価収載(上市)までの期間は、予見可能性という観点では非常に分かりやすくなっています。また、民間保険が相応の市場を占めている米国は別として、欧州各国と比較すると早い段階から誰もが公的保険下で自己負担を抑えながら新医薬品を使える環境となっています。
ここでは、日本の新医薬品での承認審査及び薬価収載の期間について、概括します。
承認審査期間
通常の新医薬品の場合、日本では審査期間は12か月間が目標値として設定されています。希少疾病医薬品等優先審査品目の場合は、9か月間が目標値となります。
この設定は、PMDAの事業計画等で言及されています。例えば、2024年度の事業計画はこちらにありますが、通常の新医薬品、優先審査の新医薬品で、80%タイル値でそれぞれ12か月間と9か月間を達成すると明示されています。したがって、例外はあるでしょうが、80%の品目で目標期間を達成するという意思表示をしています。(また、近年、この目標は達成されてきています。)
この審査期間は、申請者側と審査側の持ち時間を合計した期間(総審査期間)になります。欧州のEMAや米国のFDAでは、審査側の持ち時間を設定していることから意味合いが大きく異なります。
日本では、審査期間の達成に向けて、審査側(PMDA)のみならず、申請者側(業界)も努力をしていくことが求められます。また、審査側の観点からは、無意味な質問等を発出することによる申請者側の時間の浪費といったことを発生ないような努力が求められていることになります。
また、総審査期間で設定するため、承認時期が見通しやすくなります。
薬価収載期間
薬価の収載希望書の提出から薬価収載までの期間については、「医療用医薬品の薬価基準収載等に係る取扱いについて」において明示されています。直近の通知は2024年2月14日に発出されています。この通知は、診療報酬改定/薬価改定に合わせて最新のものが発出されますが、これまで長い間、以下のルールが明示されて、運用されています。
この運用ルールというのは、「新医薬品の薬価基準収載が施行されるまでの標準的な事務処理期間は、当該新医薬品の承認から原則として60日以内、遅くとも90日以内とする」というものです。
したがって、新医薬品について、承認から60日以内に薬価収載となります(通称、60日ルール)。
この60日ルールは、日米通商交渉であるMOSS協議の結果であり、1986年の合意に基づき運用されています。このルールの起源については、こちらに詳解されています。
日本では、新医薬品が承認されてから60日で、公的保険の下、誰もがその新医薬品にアクセス可能となることは、迅速、かつ、スケジュールの予見可能性が高いものになっています。
まとめ
日本では、新医薬品については、承認申請から承認までが9~12か月間、承認から薬価収載までが60日となります。したがって、承認申請から2年かからずに、公的保険の下で新医薬品が利用可能となります。
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