米国、分散型治験(DCT)での考慮ポイント(FDAガイダンス)

分散型治験(Decentralized Clinical Trial、DCT)での考慮ポイントを示した米国FDAのガイダンスが2024年9月18日に最終化されました。

実際のガイダンスはこちら、ガイダンスのページはこちらになります。

日本では、分散型治験における保険外併用療養費の取扱いに関する事務連絡が発出されていますが(関連記事)、このようなDCTに関する網羅的なガイダンス(通知)は2024年9月時点で発出されていません。DCTに関する論点整理については、厚労省が2021年3月に「オンライン治験信頼性確保・調査事業」の公募を行っているように、日本でも議論が行われてはいます。

今回のFDAガイダンスの内容も考慮しながら、日本の状況も整備されてくる可能性があることから、ガイダンスの内容を確認しておきます。

DCTのデザイン

自宅で被験者が検査するような場合、治験実施医療機関で検査する場合より、ブレが生じる可能性が指摘されています。そのようなブレへの対策を講じる(例:ビデオ通話中の検査の実施)可能性について言及されています。

いずれにせよ、治験実施医療機関への来院、自宅での対応となる来院、被験者が選択可能な来院といった点を試験デザインで明確にすべき点が示されています。

リモート治験来院

患者のプライバシーに配慮すべき点が触れられています。住居をシェアしているような場合には、自宅以外の場所でリモート来院を行う可能性も示されています。

また、かかりつけ医等の活用については、通常の診療の範囲で実施する内容のみかかりつけ医等が実施すすべきであり、治験実施計画書や治験薬概要書への理解が必要な対応はかかりつけ医等が実施すべきではないとされています。また、この場合、このかかりつけ医等は、治験担当者や治験分担医師ともみなされない旨が示されています。

その他、リモート治験で有害事象が確認された場合の対応方法は治験実施計画書の明記することが求められます。

役割と責務

依頼者は、DCTでも従来と同様の役割と責務を担うことが明示されています。かかりつけ医等を活用する場合は、適切な契約を含めて、対応することが求められます。

治験責任医師は、かかりつけ医等の監督を含めて、被験者の安全性を確保しつつ、適切な評価が実施されるよう努める必要があります。

FDAの監督

FDAの調査にあたって、治験責任医師は、責任者が対応可能な物理的な所在地を特定することが求められます。また、FDAは、その所在地以外の場所も調査する可能性があります。

同意取得及びIRB対応

電子的な同意取得も可能である旨、明示されています。また、リモート来院での同意取得も想定されています。一方で、同意取得にあたっては、治験の内容の説明及び被験者からの質問対応といったことが求められるため、かかりつけ医等が実施することは適切ではないとされています。

IRBについては、FDAが中央IRBの活用を推奨しています。

治験薬、治験医療機器の梱包及び発送

治験薬、治験医療機器の供給に関する一義的な責任は治験責任医師となるものの、(倉庫から)被験者やかかりつけ医等に治験薬や治験医療機器を直接送付することも認めています。

安全性モニタリング

依頼者が、DCTの特性を踏まえた安全性モニタリング計画を策定、実装することを求めています。例えば、かかりつけ医等が有害事象を特定した場合に、どのように報告するかを規定しておく必要があります。

DCTで利用する電子システム

かかりつけ医等は、直接eCRFにデータを入力する場合と治験責任医師にデータを提供する場合のいずれも想定されています。

また、治験担当者と被験者との間のビデオ通話や通話は、リアルタイムのコミュニケーションとみされるとのことです。したがって、それ自体を記録(録画、録音)することは求められておらず、そのコミュニケーションの記録を残すことが求められています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました