テセントリク皮下投与製剤の米国承認(2024年9月13日)

テセントリク皮下投与製剤が米国で承認(2024年9月13日)された旨をロシュがアナウンスしました。

テセントリク皮下投与製剤は、米国で初の抗PD-(L)1抗体となります。今回の承認では、点滴静注製剤と同じ適応がカバーされていますので、いずれのがんにおいても点滴静注からの切り替えが起こる可能性があります。この皮下投与製剤は、これまでに2023年に英国2024年1月にEUで承認されています。

テセントリク皮下投与製剤のメリットとして、投与時間の短縮が一番に挙げられています。点滴静注では30~60分かかるところ、皮下投与製剤では7分程度で投与が完了します。実際、ロシュのアナウンス中に、71%の患者さんが静注製剤よりテセントリク皮下投与製剤を好んだこと、また、79%の患者さんがテセントリクの皮下投与製剤と点滴静注製剤を経験した後、皮下投与製剤を選んだこと、が示されています。

抗PD-(L)1抗体の皮下投与製剤は、静注製剤の独占販売期間終了に向けて(バイオシミラーの参入対策として)、各社が世界的に開発を進めています(外部記事)。

加えて、米国では、皮下投与製剤はInflation Reduction Act(IRA)に基づく価格交渉対策になる可能性が考えられています(外部記事)。IRAは、バイデン大統領が署名した法律になります。IRAに基づく価格交渉では、Medicare(メディケア、高齢者向けの公的保険)内で米国政府から25%以上の価格割引きを求められる可能性があります。ただし、価格交渉の対象として上市から9~13年経った品目が想定されています。したがって、皮下投与製剤という「新たな品目」であれば、交渉の対象にならないのではないかということが考えられています。

そのため、今回の米国でのテセントリク皮下投与製剤の承認は、IRA対策としても一役買う可能性のある、大きな進捗であったと言えます。

2024年9月時点では、11月に控えた米国の大統領選の行方は見えませんが、民主党が勝利した場合、IRAは継続される可能性が高く、今回の承認がより意義あるものとなってくると考えられます。

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