日本での添付文書改訂の流れ(医薬品)

医薬品の添付文書改訂にあたっては、臨床試験データの追加等、製造販売業者から積極的に改訂を希望する場合は、(有料の)PMDA相談を活用して評価を受ける進め方があります。

ただし、上記のような対応はまれであり、副作用報告情報等から得られた安全性シグナルに基づき、使用上の注意の改訂等(添付文書の改訂等)を行うことが一般的です。

この記事では、そのような日本での添付文書改訂時の流れを概括します。

添付文書改訂の流れ

副作用情報等の集積により、添付文書を改訂する場合を想定しています。この場合、最終的には添付文書の改訂内容を(事前に)PMDAに届け出るとともに、PMDAのホームページに掲載されている添付文書を改訂後のものに変更することになります。

製造販売業者が自ら添付文書を改訂したい場合

添付文書の内容改訂は、法令上は届出事項であるため、企業の都合でいつでも事前に改訂内容を出せばよい制度設計にはなっています。

しかしながら、実態は、届出を提出する前に、改訂内容が適当であるか、PMDAと協議しておくことになります。そのPMDAとの協議にあたっては、安全対策に関する相談として「添付文書改訂等に伴う相談」、「その他の安全対策に関する相談」を活用します(PMDAの関連ページ。ここに相談申し込み用の様式、PMDAの連絡先等があります)。

この安全対策に関する相談は無料です。また、申し込みの時期や申し込みから実際の相談までの目安は設定されておらず、個々の相談で所要期間が大きくぶれることもあります。

なお、この相談は、臨床試験データの追加等の添付文書改訂を行う際のPMDA相談の枠「医薬品添付文書改訂事前確認相談」、「医薬品添付文書改訂相談」とは別物です(こちらは有料、申し込みのタイミング、相談実施時期にも制限あり)。

PMDAとの相談(協議)が完了し、改訂内容が合意に至った後、実際の添付文書改訂手続き(届出)の提出、改訂された添付文書の公表といった対応となります。

PMDA/厚労省からの指示による添付文書改訂の場合

副作用情報等については、PMDAも確認しており、安全性シグナルの検出、検出されたシグナルに基づく安全対策措置の必要性の検討、必要な場合の安全対策措置の内容、といったことを議論しています。

そして、添付文書の改訂(使用上の注意の改訂)の必要性を検討/注意すべきとPMDAが判断した場合、「医薬品に関する評価中のリスク等の情報について」にその内容が掲載されます。

この段階では、あくまで内容の評価中であり、実際にリスクがあると結論付けられたものではありません。

PMDAは、これらのリスクに対して、報告された情報、公表情報、製造販売業者に対する追加質問、専門家からのアドバイス(専門協議)を通して、検討を行います。

その後、内容によっては医薬品等安全対策部会安全対策調査会にて審議されます。どのような内容の場合に調査会で審議されるかは明示されていませんが、改訂内容の影響の大きさを踏まえて、判断されます。

PMDAの評価結果(及び調査会の審議結果)を踏まえて、添付文書を改訂することが適当と判断されると、使用上の注意の改訂指示通知が厚労省から発出されます。通知の一覧はPMDAのホームページから確認可能です。

この通知に合わせて、製造販売業者は、添付文書の改訂内容を届け出るとともに、改訂された添付文書の公表を行います。

米国、欧州との違い

日本では添付文書、米国ではLabeling、欧州(EMA)ではSmPC(Summary of product characteristics)となっています。

欧米では、これらの内容は承認審査の中で確認され、承認事項となっています。一方で、日本では、添付文書の内容は、承認審査の中で確認はされますが、承認事項とはなっていません

したがって、日本では、添付文書の改訂について、承認事項一部変更申請(と審査及び承認)という対応に必ずしもならず、今回のような安全性情報に基づくものは届出対応となります。

届出とはなっているものの、PMDAとしても改訂内容を確認しておきたいということで、実質事前に相談するような運用となっているのが現状です。

米国、欧州では、承認事項一部変更申請に相当する対応により、変更内容の審査、承認を行って、内容の改訂に至ります。詳細の手続きについては、以下にあります。

まとめ

日本において、副作用情報等の集積により添付文書を改訂する場合、①PMDAとの相談を経て、添付文書の改訂の届出を行う、②PMDAの評価に基づく厚労省からの使用上の注意の改訂指示通知を経て、添付文書の改訂の届出を行う、という流れとなります。

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