中間とりまとめ:創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議(2024年5月22日)

内閣官房健康・医療戦略室が実質主催する「創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議」について、2024年5月22日に中間とりまとめを公表しました。

この構想会議は、2023年12月に立ち上げられた会議体で、厚労省は庶務協力、PMDAは藤原理事長が構成員として入っています。

今回、中間とりまとめに至ったため、この内容が2024年6月の骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針)に入ることが想定されます。その意味で、本構想会議は一定の成果を出し、役目を終えたことになります。

ここでは、この中間とりまとめの内容を確認しておきます。

中間とりまとめの内容

中間とりまとめの概要はこちら、とりまとめ本文はこちらになります。また、概要のポンチ絵を以下に貼り付けます。

概要にあるように、「医薬品産業を重要な成長産業と捉え、政策を力強く推進すべき」としています。そして、大きく3つの論点から、今後対応すべき具体的な内容を整理しています。

  1. ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロス対策を含む、日本での最新の医薬品アクセスの確保
  2. 日本の創薬力強化(創薬の地となる)
  3. 日本での投資とイノベーションの維持

また、この目標の進捗状況はフォローアップしていくべきとされています。

所感

薬事的観点

薬事的には、薬事規制の見直し、運用の改善が挙げられていますが、報告書の中身をみると先日来の「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」で出てきた内容、方向性を着実に進めるべき、という話になっており、めぼしい内容はありません。(厚労省的には、よい方向で会議が進んだのではないかと思います。)

PMDAに対しては、英語対応の強化、ベンチャー支援といった注文がついています。が、この対応をPMDAが本当にやるべきなのか、また、やる能力があるのか、は疑問です。

ベンチャーを含めて企業にとって、PMDAの英語対応が不十分であることをもって、日本市場への参入することをためらうとは到底考えられません。日本語対応にかかるコストは、開発及び上市維持に必要なコストと比べると、微々たるものです。あくまで、日本市場に魅力があるかで日本での開発判断がなされるでしょう

PMDAのリソースは、日本語対応でもひっ迫しています(とPMDAが言っています)。そのため、薬事のあり方検討会を受けた希少疾病用医薬品の指定の早期化、拡大の対応を行ったにもかかわらず、優先審査、優先相談に該当する指定と該当しない指定が発生してしまっています(関連記事)。そのような中で、英語対応のリソースを割くことが今必要なのかは疑問です。

また、ベンチャー支援については、そもそもPMDAは、自身で研究、開発を行っておらず、申請者(開発者)側の提案に対して、コメントをすることしかやってきていません。そのような組織が、積極的に開発戦略の立案アドバイスをすることは厳しいでしょう。

薬事以外のめぼしい提案

「外資系企業・VCも含む官民協議会の設置」がこの会議体独自の提案となっています。会議をやって新しい会議体を作るという提案を出すとは。。。という感じですが。この協議会を通して、外資系企業やVCの協力をコミットさせようとも目論んでいるようですので、誰が参画してくるかは興味深いです。

骨太方針2024に入れ込むことで新たに予算措置がされそうな提案としては、「ファースト・イン・ヒューマン(FIH)試験実施体制の整備」があります。本文中に「FIH 試験規模の新規モダリティのGMP準拠の治験薬製造施設、研究施設を併設するFIH 試験実施施設とするとともに、橋渡し研究拠点の一層の活用・強化を行うことで、効率的な創薬環境を提供する」とあることから、施設整備に関する予算措置を想定していると考えられます。ここへの積極的投資は、開発早期からの日本の関与、日本の産業育成の観点から意義があると考えます。コストとスピード感から日本がFIH試験の対象国として選ばれるよう関係各所が前向きに取り組んでいくことは重要です。

また、先日の自民党から出てきた「がん遺伝子パネル検査の保険外併用療養の議論」と同様、新たな技術の保険外でのアクセスに言及があります。こちらでは、保険外併用療養かどうかといった論点というより、民間保険を新たに整備して保険外の治療、医薬品アクセスを確保すべきと提言しています。

その他

「目標の進捗状況はフォローアップしていくべき」との仕込みをしたことで、内閣官房的には、自分たちの業務を追加し、また、医薬品産業に一定の影響力を出し続ける枠組みを整えることで、存在意義を残したというようにも見えます。

最後に、「医薬品産業を重要な成長産業と捉え、政策を力強く推進すべき」という点は、どこまで政府内で意識統一されるか、政府のリーダーシップが発揮されるかが問われていますが、まさにこの提言が実現されることを期待します。

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